婚活パーティーからの帰り道や、マッチングアプリで会った帰り道。 「今日の人は、こちらの話をあまり聞いてくれなかったな……」とモヤモヤしているのに、なぜか連絡先は交換して、次も会う約束をしてしまった。
「条件を下げたつもりはないのに、どうしてOKを出したんだろう?」
そんな自己嫌悪に陥ったときは、少し立ち止まってみてください。 もしかするとあなたは、相手への「純粋な関心」と、「このまま独りだったらどうしようという不安」をごちゃ混ぜにしてしまっているのかもしれません。
今回はSpielmannら(2013年)の心理学論文をもとに、頭で考える「条件」と、実際の「関心」の間に生まれるズレを紐解き、会ったあとに自分の気持ちを整理するヒントをお伝えします。
01頭では「条件を下げていない」つもりでも…
論文で扱われている「ひとりへの不安(Fear of being single)」とは、主に恋人がいない状態や、将来そうなることへの恐れを指します(単に一人で過ごす時間が苦手、という意味ではありません)。
交際相手のいない141人を調べた研究で、「相手に求める最低基準」と「ひとりへの不安の強さ」の関係を調べたところ、興味深い結果が出ました。
| 相手に求めるもの | 不安との相関(r) |
|---|---|
| 見た目の良さ | −.02 |
| 経済的な資源 | +.03 |
| 良いパートナーとしての特性※ | +.03 |
(※相手のニーズへの気遣いや、親しみやすさなど)
相関(r)は−1から+1の値を取り、マイナスが大きいほど「不安が強い人ほど基準が低い(妥協している)」ことを示します。しかし、上の3つはどれもゼロに近く、統計的に意味のある関連は見られませんでした。
(※「子どもを望むこと」の基準とはr=+.17という小さな正の相関がありましたが、全てが無関係だったわけではありません)
つまり、「ひとりが怖いからといって、アンケートで答えるような『希望条件』を自分から一律に下げているわけではない」と言えそうです。
02いざ目の前にすると「関心」が高まってしまう罠
では、なぜ「微妙な人」にOKを出してしまうのでしょうか。 それは、アンケート上の条件ではなく、実際の「プロフィール」や「人」を前にしたときの反応に違いが出るからです。
別の研究で、女性88人に「思いやりの高い男性」または「低い男性」のプロフィールを1件だけ読んでもらい、恋愛的な関心(デートしたいか等)を測りました。 すると、「思いやりの低いプロフィール」を読んだ場合、ひとりへの不安が強い人ほど、相手への関心が高く評価される傾向がありました(標準化係数β=.37)。
さらに、トロントで行われたスピードデート(約25人と各3分話し、連絡先を交換したい相手を選ぶイベント)の分析でも、不安が強い人ほどより多くの相手を「連絡先を共有したい相手」として選ぶ関連が見られました。
頭の中では「思いやりがあって、話を聞いてくれる人がいい(条件は下げていない)」と思っていても、いざ出会いの場に出ると「次の出会いがないかもしれない」という不安から、ストライクゾーンを広げてしまう(=関心を示してしまう)のだと考えられます。
03会ったあとに試したい「3つの振り返りメモ」
「ひとりが怖い」という感情自体は、決して悪いものではありません。しかし、その不安に主導権を握られたまま「次も会おう」と急いで決めてしまうと、後悔につながりやすくなります。
すぐに結論を出す前に、スマホのメモ帳などに以下の3つを書き出してみることをおすすめします。
- 1. 相手は「具体的に」何をしていたか
(例:話を最後まで聞いてくれた、断ったことを尊重してくれた、質問しても自分の話にすり替わった、など事実を書く)
- 2. 自分は「どう接してもらいたい」のか
(例:安心して話したい、予定を一方的に決めず相談したい、など関係性において大切にしたいことを挙げる)
- 3. 「会い続けたい気持ち」の内訳は何か
(例:相手の〇〇な部分への興味が40%、次の出会いがないかもという不安が60%、など分けて書いてみる)
良い点が一つあれば交際を進めてよい、という採点表ではありません。 相手の良さと自分の不安を切り分けることで、「これは相手への好意ではなく、焦りから来ているな」と冷静に気づくための作業です。もし言葉にできないなら、結論を急がなくても大丈夫です。
※なお、威圧的な態度や束縛などで「怖い」と感じる場合は、相手の良さを探すよりも、ご自身の安全と信頼できる人への相談を最優先してください。
04この研究を自分の判断に使うときの注意点
ラブラボとしてお伝えしておきたいのは、この結果をもって「不安があるからあなたの選択は間違っている」「不安があるから魅力がない」と自分を責める必要は全くないということです。
今回紹介したのは北米の学生やオンラインで集めた参加者、短時間の対面イベントでの結果であり、選んだ相手と長期的にどうなったかまでを追ったものではありません(※1)。また、不安があるからといって、相手から選ばれる人数が減る(魅力がない)という関連は確認されませんでした。
「条件を下げてしまった…」と自分を評価して落ち込むのではなく、「相手のどんな行動が心地よかったか」「私はどんな接し方を望んでいるか」という自分の軸に立ち返ってみてください。
相手の「思いやり」や「応答性」についてもう少し深く考えたい方は、理解し、気遣ってくれる相手との関係を扱った記事もぜひ参考にしてみてください。
参考文献
- Spielmann, S. S., et al. (2013). Settling for Less Out of Fear of Being Single. Journal of Personality and Social Psychology, 105(6), 1049–1073. 原論文のDOI
- Spielmann, S. S., et al. (2018). Correction to Spielmann et al. (2013). Journal of Personality and Social Psychology, 115(5), 804. 訂正のDOI
(※1:なお、この論文には2018年の訂正があります。交際中の人を追ったStudy 3において「もし恋人がいなかったら」という条件を加えた尺度を使っていたという記述の訂正であり、数値や結論そのものを覆すものではありません)