やさしくて、落ち着いていて、話も合う。事前に思い描いていた「理想のタイプ」にかなり近い人と会えたのに、2回目の約束が近づいても気持ちが盛り上がらない。反対に、まったくタイプではなかったはずの人のことを、なぜか何度も思い出してしまう。
そんなとき、「条件はピッタリ合っているのに、好きになれない自分がおかしいのかな」「せっかくの出会いなのに贅沢なのかな」と自分を責めてしまう人もいるかもしれません。
しかし、心理学の研究を見ると、その感覚は決しておかしいものではないことがわかります。
01結論:「理想への当てはまり」と「自分の気持ち」は別物
米国の大学生208人を7か月間追跡した研究では、意外な事実が示されました。
それは、「事前に答えた『理想』に相手が近いかどうか」は、その相手に対する恋愛的な関心の高さと明確な結びつきが確認されなかったということです。
一方で、関心の高さと強く結びついていたのは、「この人を魅力的だと感じる」「また会って話したい」といった、目の前の相手に対する直接的な「感じ方」でした。
研究のポイント ここで測った関心は、本人が直感的に「この人に恋愛的な関心がある」と感じる度合い(1〜7段階)です。結婚後の長期的な相性や、相手の年収・学歴といったスペックを測ったものではありません。
つまり、「理想の条件を満たしているからといって、自動的に好きになるわけではない」ということです。
02デートのあと、自分に聞いてみたい3つの問い
「条件は良いのに惹かれない」と迷ったとき、頭での採点(条件)と、心での反応(気持ち)を分けて整理してみましょう。以下の3つの問いは、自分の素直な感覚に気づくためのヒントになります。
- 1. この人を「素敵だな」と感じる瞬間はあったか
見た目の好みや仕草、ふとした表情など、理屈抜きで自分の目に魅力的に映る瞬間があったかを振り返ります。
- 2. また会って話したい、と自然に思えるか
「次も会うべきだ」という義務感や条件の採点とは別に、「またあの人と時間を過ごしたいか」を自分に問いかけてみてください。
- 3. こちらに関心を向けてもらえている手応えはあったか
自分がどう感じたかだけでなく、相手の言葉や行動から「自分に興味を持ってもらえている」という安心感や手応えがあったかを振り返ります。
理想の条件を書き出すことは、自分の希望を整理する目安として非常に有効です。ただ、「〇項目当てはまっているから、好きにならなきゃいけない」と、自分の気持ちまで採点表に合わせる必要はありません。
迷ったときの考え方の目安
| あなたの状況 | 考え方のヒント |
|---|---|
| 理想に近いのに惹かれない | 条件と気持ちは別物です。好きになれない自分を責めず、一度立ち止まってみましょう。 |
| タイプとは違うが、また話したい | 気持ちが動いている証拠です。自分も望むなら、もう一度会ってみるのがおすすめです。 |
| 結婚観や暮らし方で譲れない点がある | この研究結果とは分けて考えましょう。好意があっても、絶対に譲れない希望を無理に下げる必要はありません。 |
ずっと気持ちが動かない相手と、義務のように会い続ける必要はありません。自分の感覚を大切にしてください。
03データで見る:研究では何を確かめたのか?
ここからは、少し詳しく研究の内容を知りたい方向けの解説です。
Eastwickら(2023)は、米国中西部の大学に入学したばかりの、交際相手がいない異性愛者208人(平均18.1歳:男性91人、女性117人)を対象に調査を行いました。
約7か月の間に3週間おき(計10回)の調査を実施。「恋愛関係になりたいと思う相手」を挙げてもらい、その相手への関心を継続的に報告してもらいました(対象となった相手は1,065件、延べ7,179回の回答)。
理想との一致は、本当に関係ない?
調査では、参加者が最初に答えた「理想(頼りになる、わくわくする、外見的に魅力的など14項目)」と、実際の相手の特徴を比べました。
その結果、相手を初めて報告した時点では、14項目のいずれにおいても「理想を重視する人ほど、その特徴を持つ相手への関心が高い」という統計的に明確な関連は確認されませんでした。
もちろん、これは「理想は一切関係ない」「条件はすべて捨てるべき」という意味ではありません。ただ、「事前の理想通りかどうか」が、初期の恋愛感情の決定打にはなりにくいことを示唆しています。
関心と結びついていたのは「直感的な感じ方」
一方で、最初の回答時点で恋愛的な関心の高さと関連していたのは、以下のような「その相手への感じ方」でした。
| 相手への感じ方 | 関心の差(※モデル上の予測値) |
|---|---|
| 外見的に魅力的だと感じる | 約1.1点 高い |
| 定期的に会ったり話したりしたい | 約0.9点 高い |
| 相手も自分に関心がありそうだと感じる | 約0.7点 高い |
(※関心の尺度は1〜7。平均より1標準偏差高かった場合と低かった場合の差を比較)
これらは「相手が自分に関心を示してくれたから、好きになった」という因果関係を証明するものではありませんが、頭で考えた条件よりも、目の前で起こるコミュニケーションや直感的な魅力が、気持ちの動きと連動していることがわかります。
04婚活や恋活で活用する際の注意点
この研究は米国の若い大学生を対象としたものであり、日本の婚活や、長期的な結婚生活を前提とした相手選びにそのまま当てはめられるわけではありません。また、相手の特徴もあくまで「参加者から見た評価」です。
「2回目に会ってときめかないのは普通のことか?」といった個人の判断基準に直接使うのは難しいですが、「条件が完璧でも気持ちがついてこないのは、心理学的なデータから見てもよくあること」と捉えることで、過度な焦りや自己嫌悪を和らげる材料にはなるはずです。
05条件に合うことだけで、気持ちを決めなくていい
理想に近い相手が見つかっても、気持ちまで同じように動くとは限りません。次に会うか迷ったら、条件への当てはまりに加えて、ぜひ「自分はまた会いたいか」という素直な気持ちを確かめてみてください。
プロフィールから惹かれ方を予測する別の研究については、条件は合うのに、なぜ惹かれないのかの記事でも紹介しています。
参考文献
Eastwick, P. W., Joel, S., Carswell, K. L., Molden, D. C., Finkel, E. J., & Blozis, S. A. (2023). Predicting romantic interest during early relationship development: A preregistered investigation using machine learning. European Journal of Personality, 37(3), 276–312. 論文(DOI)