「会えない時間が長い恋人と、どのくらいの頻度で連絡を取るのが正解なんだろう」。遠距離恋愛をしていると、そんな疑問が頭を離れません。電話したほうがいい? ビデオ通話のほうが温度感が伝わる? それともメッセージで細切れに話しているほうが続きやすい?
先に生活側の答えを言うと、遠距離では「毎日必ず長く話す」より、短くても相手の存在が返ってくる連絡が効きやすそうです。返信が半日空いても、「今日は遅くなる」「あとでちゃんと返すね」があるだけで、不安の出方はかなり変わります。
この記事では、カナダで大学生647人を対象に行われた2021年の研究(Holtzman et al., 2021)をもとに、遠距離恋愛と近距離恋愛で、テキストメッセージ・音声通話・ビデオ通話のどの連絡手段が交際満足度と結びついていたかを整理します。
01まず結論:遠距離なら「テキスト」、近距離なら「電話」と結びつきやすかった
研究では、テキストメッセージ、音声通話、ビデオ通話の使い方を、遠距離と近距離の人で比べていました。
この研究での遠距離と近距離は、次のような分け方です。
- 遠距離: 地理的に離れていて、頻繁には対面で会えない関係。
- 近距離: 地理的に近く、ふだん対面で会いやすい関係。
何km以上なら遠距離、月に何回以下なら遠距離、という厳密な線引きではありません。回答者の関係を、会いやすさの違いで大きく分けて比べた研究だと考えると理解しやすいです。一番ざっくり言うと、結果はこうなります。
| 関係のタイプ | 満足度と結びついていた連絡 | 満足度との関連が目立たなかった連絡 | 読み方 | | --- | --- | --- | --- | | 遠距離 | テキストメッセージの頻度/相手の返事のしっかり感 | 音声通話の頻度(利用は多いが、満足度との関連は目立たなかった) | 会いにくい関係では、短文でも反応し合える文字連絡が支えになりやすかった | | 近距離 | 音声通話の頻度 | テキストメッセージの頻度/テキストメッセージの返事のしっかり感(利用は多いが、満足度との関連は目立たなかった) | ふだん会える関係では、文字より声で話す時間のほうが満足度と結びついていた | | 両方 | ー | ビデオ通話の頻度 | ビデオ通話を多く使うこと自体は、満足度との結びつきが弱かった |
つまり、「テキストは恋愛にプラス」と一律に言うより、会いにくい関係ほど、文字での細かいやり取りが満足度の支えになりやすかった、というのがこの研究の見え方です。逆に、ふだん会える関係では、文字より声で話す時間のほうが満足度と結びついていました。
02生活で使うときの見方:手段ではなく「会えなさを補えているか」
この結果を恋活・婚活の場面に置き換えるとき、注意したいのは「メッセージを増やせば満足度が上がる」という読み方をしないことです。研究は相関を見ているので、「メッセージが多い→満足」とも、「うまくいっているからメッセージも多い」とも、両方の解釈ができます。
そのうえで、会いにくい関係ほどテキストの役割が大きくなりやすい、というのは生活感覚としても理解しやすいところです。例えばこんな見方ができます。
| 状況 | 見直したいポイント | 注意したいサイン | | --- | --- | --- | | 遠距離・なかなか会えない | 短文でも気軽にやり取りできているか/返事が遅れたときに一言添える習慣があるか | 連絡が「予定確認」だけで終わっていないか/既読スルーが続いて不安が増えていないか | | 近距離・週1以上会える | 会っているときの会話・電話で温度感を確かめられているか | 大事な話まで文字だけで済ませていないか/声で話す時間がほとんどなくなっていないか | | どちらにも共通 | 量よりも、相手にちゃんと反応してもらえていると感じられるか | 量は多いのに、返事が雑・話題が一方通行になっていないか |
この研究で効いていたのは、「やり取りの量」だけでなく、「相手がしっかり反応してくれていると感じる度合い」(研究では「相手の返事のしっかり感」として測られていました:perceived responsiveness)でした。メッセージの頻度を上げる前に、返事の質や、相手の話題への乗り方のほうを見直すほうが、現実には効きやすいかもしれません。
たとえば、次のようなリズムなら「毎日ずっと連絡」ではなくても、会えなさを補いやすくなります。
正解を1つに決めるより、生活時間と不安の出方に合わせて型を選ぶほうが現実的です。
- 毎日短文型
朝・昼・夜のどこかで一言だけ返す。忙しい日でも「読んだよ」「今日は遅くなる」を残す。
- 夜まとめ型
日中は無理に返さず、夜にその日の出来事を2〜3往復する。仕事中に返信を迫らない関係に向きます。
- 週2電話+日中メッセージ型
普段は短文、週に1〜2回だけ声で話す。文字だけだと温度差が出やすいカップルに向きます。
- 返信遅め合意型
返信が遅い前提で、「24時間以内には返す」「急ぎは電話」など最低ラインだけ決める。
言い方も、ルールっぽく押しつけるより、「返事が遅いと不安になるから、遅れる日は一言あるとうれしい」のように、自分の不安とお願いを分けるほうが伝わりやすいです。
03OK・注意・避けたいの目安
実用的なボーダーラインを、研究結果と生活感覚で整理してみます。
OKと考えてよい目安
- 遠距離で、1日のどこかで短いメッセージのやり取りが続いている。
- 既読のあと、その日中には何かしらの返信がある。
- 「忙しい日は遅れる」「夜は無理」など、お互いの返信ペースのルールが共有されている。
注意したい目安
- 連絡の頻度は多いが、内容が業務連絡(予定・移動・到着)ばかりになっている。
- 一方が常に長文、もう一方が常に短文で、温度差が固定化している。
- 既読スルーが続くたびに、片方が不安になり詰める/もう片方が黙る、というパターンになっている。
できれば避けたいやり方
- 重い話・別れ・将来設計を文字だけで完結させる。
- 連絡頻度を「愛情のメーター」として使い、量で相手を試す。
- 相手の返信ペースを変えさせるために、わざと既読をつけない・無視する。
研究そのものは「重い話をメッセージでするか」までは扱っていません。ここは生活側の判断として読んでください。
04研究の概要(くわしく知りたい人向け)
ここからは、論文の中身をもう少し具体に書きます。読み飛ばしても結論は変わりません。
- 対象: カナダの大学(心理学コース履修者中心の便宜サンプル)に所属する18〜25歳の若年成人647人(平均19.75歳)。女性73.6%・男性26.4%、ヨーロッパ系(白人)71.9%、東・東南アジア系12.7%など。93.7%が異性愛者
- 関係状況: 76.7%が「交際中」、23.3%が「デート中」(既婚・別居・離婚・独身は除外)
- 遠距離の定義: 「地理的に離れていて、頻繁には対面で会えない」関係。回答者の36.5%が遠距離、63.5%が近距離だった。距離kmや会う回数で一律に切った分類ではない
- 方法: 横断的なオンライン調査(2017年3月〜2018年4月)。テキスト・音声通話・ビデオ通話それぞれについて、頻度と「相手の返事のしっかり感」を6段階で自己報告
- 満足度の測定: Relationship Assessment Scale(7項目、5段階、合計7〜35点)。研究内の信頼性は十分(α=.87)
主な結果を見る前に、数字の読み方を置いておきます。下の表はすべて 1〜6点の6段階尺度です。頻度の数字は「どれくらい使っているか」、返事のしっかり感の数字は「相手がその手段でどれくらい反応してくれていると感じるか」を表します。数字が大きいほど多い/しっかり反応している、という意味です。
ざっくり読むなら、5点台はかなり高め、4点台は中〜高め、3点台は中くらいです。差を見るときは、1点以上ならかなり目立つ差、0.2点前後なら小さな差として読むと入りやすくなります。
| 指標 | 遠距離 | 近距離 | 読み方 | | --- | --- | --- | --- | | ビデオ通話の頻度 | 4.67 | 3.35 | 遠距離のほうがかなり多い。会えなさを映像で補っている可能性がある | | 音声通話の頻度 | 4.83 | 4.47 | どちらも比較的多いが、遠距離のほうが少し多い | | テキストメッセージの頻度 | 5.61 | 5.44 | 両群ともかなり多い。遠距離だけが特別に多いわけではない | | ビデオ通話の返事のしっかり感 | 4.10 | 3.49 | 遠距離のほうが、ビデオ通話で反応を得られている感覚がやや高い | | 音声通話の返事のしっかり感 | 4.22 | 4.01 | 差は小さめ。どちらも中〜高め | | テキストメッセージの返事のしっかり感 | 4.13 | 4.00 | ほぼ同じ。テキストの反応感そのものは遠距離だけ高いわけではない |
この表からまず言えるのは、遠距離の人だけがテキストメッセージを圧倒的に多く使っていた、という話ではないことです。テキストは近距離でも遠距離でもかなり使われています。違いが大きいのは、むしろビデオ通話の頻度です。
ただし、満足度との結びつきまで見ると話が変わります。遠距離では、テキストメッセージの頻度や返事のしっかり感が満足度と結びついていました。近距離では、テキストより音声通話の頻度のほうが満足度と結びついていました。
満足度との結びつき(回帰分析の交互作用)も整理します。以下の b 値は、満足度の合計(7〜35点)に対して、連絡尺度(6段階)が1段階上がるごとに何点動くかを表します。あくまで関連の強さの目安で、効果量としては小〜中程度(partial r で .15〜.20 前後)です。
- テキストメッセージ頻度 × 遠距離: 遠距離では「テキストメッセージが多いほど満足度も高い」関係が見られた(b=1.46, p=.002)。近距離では関係が見られなかった(b=0.10, p=.75)
- テキストメッセージの返事のしっかり感 × 遠距離: 遠距離でのみ満足度と結びついた(b=1.03, p=.01)
- 音声通話頻度 × 遠距離: 近距離でのみ満足度と結びついた(b=0.83, p=.001)。遠距離では結びつきが見られなかった(b=−0.01, p=.99)
- ビデオ通話頻度: 単独で見るとどちらの群でも満足度との結びつきは弱かった
なお、満足度そのものは、遠距離(平均29.29)と近距離(平均29.57)でほぼ差がありませんでした。遠距離だから満足度が低い、というデータではなかった点も覚えておきたいところです。
研究の解釈として、論文では「遠くにいても、こまめな連絡で“心理的な近さ”を作れる」という考え方(electronic propinquity theory)に沿って、「会いにくい関係では、文字でのやり取りのような“手元に残る連絡手段”が、関係を支える役割を持ちやすいのではないか」と議論されています。
Research note 裏付けにした論文 細部を確認したい方向けに、論文の枠と主な数値を残しておきます。
- 著者
- Susan Holtzman, Kostadin Kushlev, Anastasia Wozny, Renee Godard
- タイトル
- Long-distance texting: Text messaging is linked with higher relationship satisfaction in long-distance relationships
- 掲載誌
- Journal of Social and Personal Relationships, 38(12), 3543–3565
- 出版年
- 2021年
- 対象
- カナダの大学(心理学コース履修者中心の便宜サンプル)に所属する18〜25歳の647人(平均19.75歳、女性73.6%、ヨーロッパ系71.9%、異性愛者93.7%)。76.7%が交際中、23.3%がデート中
- 方法
- 横断的なオンライン調査(2017年3月〜2018年4月)。テキストメッセージ・音声通話・ビデオ通話の頻度と「相手の返事のしっかり感」を6段階で自己報告。満足度はRelationship Assessment Scale(7項目・5段階・合計7〜35点、α=.87)
- 遠距離の比率
- 36.5%が遠距離、63.5%が近距離
- 交互作用(テキストメッセージ頻度 × 遠距離)
- 遠距離 b=1.46, p=.002/近距離 b=0.10, p=.75
- 交互作用(テキストメッセージの返事のしっかり感 × 遠距離)
- 遠距離 b=1.03, p=.01
- 交互作用(音声通話頻度 × 遠距離)
- 遠距離 b=−0.01, p=.99/近距離 b=0.83, p=.001
- 効果量の目安
- partial r で .15〜.20 前後(小〜中程度)
- 満足度の平均
- 遠距離29.29/近距離29.57(群差はほぼなし)
- DOI
- https://doi.org/10.1177/02654075211043296
05限界と注意点
この研究を読むときは、次の点をふまえてください。
- 横断研究なので、原因と結果の方向は決められません。「メッセージを増やすと満足度が上がる」とも、「うまくいっている遠距離カップルほどメッセージを続けやすい」とも読めます
- 対象はカナダの大学(心理学コース履修者中心)から集めた便宜サンプルで、18〜25歳・女性・ヨーロッパ系・異性愛者が多めでした。日本の社会人や、結婚を見据えた婚活層、同性カップル、年齢の高いカップル、地方在住者などにそのまま当てはめるのは慎重にしたほうがよいです
- 連絡頻度・返事のしっかり感は1問ずつの自己申告です。実際のスマートフォン利用ログと一致しているとは限りません
- 一方のパートナーだけの回答です。相手側からどう見えていたかはわかりません
- 関係のうまくいかなさ(嫉妬、不安、ケンカの頻度など)は測られていません
「遠距離ならメッセージを増やせばいい」と一律に決める根拠としては弱く、自分たちの会えなさをどう補うかという観点で参考にする、くらいの距離感が無難です。
06恋活・婚活ではどう考えるか
最後に、生活側にもう一段引きつけてみます。
- 出会って間もない相手と、会う回数を増やしにくい時期(仕事が繁忙、住んでいる場所が遠い、家族の事情など)では、テキストメッセージの量と質を意識して整えるほうが、関係維持の観点では理にかなっています
- ふだん会える関係なら、文字でやり取りする量を増やすことより、会っているときの会話と、声で話す時間を確保するほうが、満足度との結びつきが強い可能性があります
- 大学生サンプルの研究なので、社会人・婚活層では「金〜日にしか会えない」「平日と週末で連絡量に差が出やすい」など、生活時間軸の違いがあります。同じペースを目指すより、自分たちの平日と週末の連絡リズムで、お互いに無理のない置き方を探すほうが現実的です
- いずれの場合でも、量より「相手にちゃんと届いている/返ってきている」という感覚のほうが効きそうです。返事が短くても、相手の話題に触れて返す、絵文字やスタンプで温度感を添える、といった小さな工夫の余地があります
- 既読スルーやレス遅れを「冷めた」と決めつける前に、自分たちが暗黙に置いている連絡ペースのルールを、一度言葉にして共有しておくと、不安が減りやすくなります
「メッセージの頻度=愛情の量」と短絡させず、自分たちの関係段階・生活時間に合った形で連絡の置き方を見直す。1本の研究から取り出せるヒントは、そのくらいの粒度だと思います。
07まとめ
- 遠距離恋愛では、テキストメッセージの頻度と「返事のしっかり感」が交際満足度と結びついていた
- 近距離恋愛では、テキストメッセージではなく音声通話の頻度のほうが満足度と結びついていた
- ビデオ通話は、両群とも満足度との結びつきが弱かった
- ただし1本の横断研究で、対象もカナダの大学生中心。日本にそのまま当てはめるには注意が必要
- 連絡の量だけでなく、お互いに反応し合える関係になっているかを見直すほうが、現実には効きやすい
会いにくい時期があっても、それだけで関係の良し悪しが決まるわけではありません。会えない時間に、お互いの存在を感じられる連絡の置き方を、自分たちに合うやり方で探していけるとよさそうです。
08参考文献
本文内の統計・参考情報は、以下の資料をもとに確認しています。
- JSPR Long-distance texting: Text messaging is linked with higher relationship satisfaction in long-distance relationships
Holtzman, S., Kushlev, K., Wozny, A., & Godard, R. (2021). Journal of Social and Personal Relationships, 38(12), 3543–3565.