マッチングアプリや婚活では、年齢、職業、年収、身長、趣味、写真の雰囲気など、会う前に多くの情報を見ることができます。
けれど、条件が合っていても、実際に会うとピンとこないことがあります。逆に、条件だけ見ると意外な相手なのに、話してみると居心地がいい。そんな経験は、珍しくありません。
この記事では、恋愛データの分析研究をもとに、プロフィールで判断できることと、会ってから確かめたいことを分けて考えます。
伝えたいことは、ひとつです。
条件は入口。相性は、やり取りと体験の中で見えてくる。
プロフィールが意味ない、と言いたいのではありません。プロフィールは、候補を絞る入口として、確かに役立ちます。ただ、「この人だから惹かれる」という、会ってから生まれる感覚までは、会う前の情報だけでは読み取りにくい――そういう、静かな線引きのお話です。
なお、ここでお話しする「相性」は、結婚生活全体の成功や長期的な相性の話ではなく、実際に会ったときに「惹かれるか」「もう少し話してみたいか」という、初対面の入口に近いものを指しています。
01研究の概要
取り上げるのは、米国で行われたスピードデートの研究です。
- 著者: Joel, S., Eastwick, P. W., & Finkel, E. J.
- タイトル: Is Romantic Desire Predictable? Machine Learning Applied to Initial Romantic Attraction
- 掲載誌: Psychological Science, 28(10), 1478-1489
- 出版年: 2017年
- DOI: https://doi.org/10.1177/0956797617714580
研究の流れはシンプルです。
- 米国の大学生350名が、性格、価値観、自己評価、理想の相手像など、100以上の質問に事前に回答する。
- 1〜2週間後、参加者は異性12人前後と、1人4分ずつスピードデートで会話する。
- 各デートの直後に、相手への恋愛的な惹かれ(「好き」「魅力を感じた」「もう一度会いたい」など)を評価する。
- 研究者たちは、AIによる予測技術の一種である「機械学習」(多くの回答から、予測に使えそうなパターンを探す分析方法)を使って、事前のアンケートだけで実際の惹かれ方をどこまで言い当てられるかを調べた。
念のため補足しておくと、これは特定のカップルを長期追跡した研究ではありません。事前のアンケートと、スピードデート後の評価をもとに、会う前のデータから、会ったときの惹かれ方をどこまで予測できるかを調べた研究です。
研究者たちは、デート直後の「惹かれ」を、次の3つに分けて分析しました。
- 人を好きになりやすい傾向: その人が、平均的に相手を好きになりやすいか。
- 人から好かれやすい傾向: その人が、平均的に相手から好かれやすいか。
- その2人ならではの惹かれ: AさんがBさんを、Aさん自身の好きになりやすさや、Bさんの好かれやすさを超えて、特別に好きになるか。
最初の2つは「全体的な傾向」、最後の1つが、私たちがふだん「この人だから惹かれる」と呼びたくなる部分に近いものです。
02研究で分かったこと
結果は、はっきり分かれました。
全体的な傾向は、ある程度予測できた
事前のアンケートから、ある程度読み取れたのは、全体的な傾向でした。
- 人を好きになりやすい傾向は、会う前の回答からある程度読み取れました(予測の当たり具合は、ばらつきの約4〜18%にあたる範囲)。
- 人から好かれやすい傾向も、会う前の回答からある程度読み取れました(予測の当たり具合は、ばらつきの約7〜27%にあたる範囲)。
たとえば、「相手に温かさや応答性を求める」と答えた人は、平均的にデート相手を好きになりやすい傾向がありました。自分を恋愛相手として魅力的だと評価している人は、実際に相手から好かれやすい傾向がありました。
「あの人はモテるタイプ」「自分は人を好きになりにくいタイプ」といった全体的な傾向は、ある程度プロフィールや事前の回答に出ていた、ということです。
でも、「この2人だから」の部分は予測しにくかった
一方で、特定の2人の間に生まれる惹かれは、会う前のデータからはほとんど予測できませんでした。
サンプルAでは、男性から女性への、その2人ならではの惹かれの予測精度は −4.55% 〜 −0.18%、女性から男性への、その2人ならではの惹かれは −1.65% 〜 +1.34%。サンプルBでも、ほぼ0%付近にとどまりました。マイナスになっているのは、複雑なモデルで予測するより、全員に平均的な値を当てたほうが結果として正確だったという意味です。
別のサンプルで検証しても、予測値と実際の評価との相関は、男性側で r = −0.06、女性側で r = 0.02。ほぼ無相関でした。
性格・価値観・理想の相手像など100以上の質問に答えてもらっても、「AさんがBさんに、ほかの誰でもない、この人だから惹かれる」という部分は、会う前のデータからは読み取れなかったのです。
ただし、会った直後の感覚は予測材料になった
ここが大切なところです。これは「相性そのものが存在しない」という意味ではありません。
実際にデートが終わった直後の印象――「相手と何か通じ合う感覚があったか」「相手は魅力的だと思ったか」「会話が自然に流れたか」――を手がかりに加えると、その2人ならではの惹かれを男性側で約21〜29%、女性側で約16〜24%まで読み取れるようになりました。
その2人ならではの惹かれは、存在しないのではなく、会う前のデータに静止画のように写っているものではなく、実際に会った場面の中で立ち上がるものらしい、ということです。
03マッチングアプリ・婚活への活かし方
ここから、恋活・婚活の場面に話を戻します。
研究の含意をやわらかく書くと、次のようになります。
- プロフィールや条件は、会う相手を選ぶ入口として役立つ。
- ただし、「この人だから惹かれる」という、会ってから生まれる感覚までは、会う前の情報だけでは分かりにくい。
- だから、条件で完璧な相手を探し続けるよりも、最低限の安心材料を確認したうえで、実際のやり取りや短時間の対面で相性を確かめるほうが、現実的です。
ポイントは、会う前に判断すべきことと、会ってから判断したほうがよいことを、分けて持っておくこと。次の2つのセクションで、その目安を書いてみます。
04会う前に確認してよいこと
プロフィールやメッセージの段階で、ちゃんと見ておきたいことです。ここは「条件で絞る」が機能する領域です。
- 結婚願望や交際目的が近いか: 結婚を考えているのか、まずは交際から、なのか。ここがズレると、後々お互いに消耗します。
- 生活リズムが極端にズレていないか: 仕事の時間帯、住んでいるエリア、休みの取り方など、会うこと自体が無理になる前提でないか。
- メッセージの温度感に違和感がないか: 返信の早さや内容よりも、「言葉のやり取りで疲れないか」のほう。
- 安全性に不安がないか: 写真と話に矛盾がないか、初対面の段取りに不自然な押しがないか。
- 絶対に譲れない条件に反していないか: 自分で「これは外せない」と決めていることに、明確に反していないか。
ここに大きなズレがある相手とは、無理に会わなくて構いません。条件は、こういう「最低限の安心材料」を担保するために役立ちます。
05会ってから確かめた方がよいこと
会う前の情報からは見えにくい、相性に近い部分です。ここは、やり取りや短時間の対面の中でしか確かめられません。
- 会話の沈黙が苦痛すぎないか: 黙る瞬間に、息が詰まるか、ふっと落ち着けるか。
- 自分が無理に演じていないか: 帰り道に「今日はちょっと無理した」感が強すぎないか。
- 相手がこちらの話を聞く姿勢を持っているか: 自分の話を入れたら、相手のリアクションがあるか。
- また会いたい理由が、条件以外にもあるか: スペックではなく、「あの話の続きを聞きたい」など、具体的な理由が出てくるか。
- 小さな違和感を無視していないか: 「言葉の選び方が少し気になった」「会計のときの態度が……」など、流したくなる小さな引っかかり。
迷ったら、相手を採点しようとせずに、自分の内側に残った感覚を3行だけ書き残してみてください。
- 身体: 会っている間、緊張は強かったか。呼吸は浅くなったか、少し落ち着いたか。
- 会話: 話した後、自分の言葉が尊重された感じはあったか。
- 余韻: また会うとしたら、何をもう少し知りたいと思うか。
「もう少し知りたいこと」が自然に出てくるなら、もう一度会ってみる余地があります。条件は合っていても、身体がずっとこわばっていたり、言葉を受け止めてもらえなかった感じが残っていたりするなら、その違和感も大切な情報です。
06注意点
ここまでの話は、「プロフィールは見なくていい」「誰とでも会えばいい」という意味ではありません。少しだけ補足します。
- 誰とでも会えばいいわけではない: 安全性や、結婚観・大きな価値観のズレは、事前に確認しておく方が安心です。会う前に弾いてよいラインは、ちゃんと持っておきます。
- 条件を全部捨てる必要はない: 条件は「会う相手を絞る」役割と、「会ってから相性を確かめる」ための余白とで、使う場面が違います。全部捨てるのではなく、役割を分けて使うのが現実的です。
- AIや診断で恋愛相性が完全に分かるわけではない: 今回の研究で見えてきたのは、「会う前のデータから読み取れる範囲には限界がある」ということです。逆に、「会ってから感じることには、ちゃんと意味がある」ということでもあります。
- この研究で扱っているのは、初対面の恋愛的な惹かれ: 結婚生活全体の成功や、長期的な関係の安定を直接調べたものではありません。あくまで「会ったときに惹かれるか」「話してみたいと思うか」という入口の話として読むのが安全です。
07まとめ
- 条件やプロフィールは、会う相手を選ぶための地図として役立つ。
- ただし、実際に歩きやすい道かどうかは、少し歩いてみないと分からない。
- 会う前に読み取れるのは、「人を好きになりやすいか」「人から好かれやすいか」という全体的な傾向まで。
- 「この人だから惹かれる」という会ってからの感覚は、実際の場面の中で立ち上がる部分が大きい。
- だから、条件で完璧な相手を探し続けるより、会う前は安心材料を確認し、会ってからは心地よさ・会話・余韻を確かめる――その使い分けを持っておく。
条件は入口。相性は、やり取りと体験の中で見えてくる。
恋愛や婚活で疲れやすいのは、会う前の情報だけで先のことまで決めきろうとするときです。プロフィールで確認できることは確認する。そのうえで、実際に会った時間の中で自分がどう感じたかを、ていねいに見る。そのくらいの余白があったほうが、人との出会いは少し誠実になります。
08注記
- この研究は、米国の大学生を対象にした4分間の異性愛スピードデートの結果です。長期的な関係満足度や結婚後の相性を直接調べたものではありません。
- 「会う前のデータでは予測できなかった」という結果は、この研究で測定された項目と分析方法に基づくものです。将来、別のデータや大規模な研究で予測精度が変わる可能性はあります。
- 文化差、年齢差、恋愛指向の多様性は十分に扱われていません。日本の恋活・婚活にそのまま当てはめるのではなく、会う前の情報に頼りすぎないための参考として読むのがよさそうです。
09参考文献
- Joel, S., Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. (2017). Is romantic desire predictable? Machine learning applied to initial romantic attraction. Psychological Science, 28(10), 1478-1489. https://doi.org/10.1177/0956797617714580