メッセージ 2026.05.16 更新

「ちゃんと深掘りしてくれる人」が好かれる:初対面の会話を分析した研究から

初対面の会話で「もっと聞いていたいな」と思える人は何が違うのでしょうか。スピードデート110人の会話を実測した2017年の研究では、質問をたくさんすることより、相手の話を受けてもう一歩聞く「フォローアップ質問」の比率が、「また会いたい」と思われることと結びついていました。自分の話し方を見直すヒントとして読んでみてください。

頑張って質問しているのに、なぜか会話が続かない。聞いているつもりなのに、相手の反応が薄い。そんな経験がある人は、話題の選び方よりも、相手の話をどう受けるか を見直すとヒントが見つかるかもしれません。

この記事では、Huangら(2017)が報告した、スピードデート110人の会話を実測した研究を取り上げて、「初対面で好かれる人の会話には、どんな共通点があったか」を整理します。結論から言うと、質問の数を増やすことより、相手の話に乗っかる質問が増えているかを見直すほうが、手応えにつながりやすい、ということが見えてきます。

01研究では、質問を4タイプに分けて比べていた

研究では、スピードデートの会話を録音し、機械学習でテキストから質問を4タイプに自動分類しました(サンプル外テストで分類精度86.97%)。ここで比べているのは、「質問をしたかどうか」だけではありません。その質問が、直前の相手の発言にどうつながっていたか です。

たとえば、相手が話した内容を受けて聞き返す質問はフォローアップ質問、直前の話題と関係なく切り替える質問はフルスイッチ質問として扱われます。おうむ返しのミラー質問や、会話冒頭の挨拶質問も別に数えられました。つまり、この研究のポイントは「質問量」よりも、質問が相手の発言に接続していたかどうかにあります。

ここでの「また会いたい」は、実際に次のデートが成立したかではなく、デート直後の質問紙で「この相手と次のデートを希望するか」と答えたかを見たものです。

差の大きさは、劇的というより控えめです。著者らの推定では、フォローアップ質問の比率が約8ポイント高い人は、20回のスピードデートをしたときに「また会いたい」と思われる相手が平均1人ほど多い、という規模でした。

これは「フォローアップ質問の比率が高くてもほとんど変わらない」というより、1回ごとの印象を大きく跳ね上げる効果ではないが、出会いが重なると差として見えるくらいの結びつき と読むのが近いです。もちろん、このサンプルでの相関なので、質問を増やせば必ず増えるという意味ではありません。

参考までに、研究で出てきた質問4タイプの違いを、論文の例から日本語に置き換えるとこうなります。

研究で分類された質問4タイプ

同じ「質問」でも、直前の相手の発言に接続しているかどうかで扱いが分かれます。

  • フォローアップ質問

    直前の相手の発言を受けて、もう一歩深掘りする質問。例:相手「今度カナダに旅行する予定なんです」→「いいですね、カナダって行ったことあるんですか?」

  • フルスイッチ質問

    直前の発言とつながりのない、別の話題に切り替える質問。例:相手「クリーニング店で働いているんです」→「休日って何して過ごすんですか?」

  • ミラー質問

    相手が出した質問を、そのまま自分も返す質問。例:相手「朝ごはん何食べた?」→「卵とフルーツ。あなたは?」

  • 挨拶質問

    会話の冒頭で出す定型のあいさつ。例:「はじめまして」「調子どうですか?」

論文 Table 2 の英語例文を、文脈を変えずに日本語に置き換えています。この研究で「また会いたい」と思われることと結びついていたのは、一番上のフォローアップ質問だけでした。

02生活で使うときの見方:質問を増やすより、「乗っかり方」を見直す

この結果を、デート・お見合い・マッチングアプリでの初回トークに置き換えるとき、注意したいのは「質問を増やせばいい」と読まないことです。研究で結びついていたのは 質問の比率(その人の質問のうち、フォローアップ質問が占める割合)でした。挨拶質問やフルスイッチ質問ばかり量を増やしても、この研究の結果からは「相手から次も会いたいと思われやすくなる」とは言えません。

そのうえで、生活感覚としても受け取りやすいのは、「相手の話を聞いてから出す質問が増えているか」を意識する という見方です。例えばこんなふうに整理できます。

会話中に見直したいポイント
状況見直したいポイント注意したいサイン
自己紹介や雑談のターン 相手の発言の中で「気になった一語」を拾って、もう一歩聞き返せているか 自分の話に戻したくて、質問を打ち切ってしまっている
相手が短く答えた直後 「具体的には?」「どんなときに?」など、相手が話を続けやすい問いに変換できているか YES/NOで終わる質問だけで会話が進み、お互いに掘り下げが起きていない
沈黙が起きそうなとき 別の話題に切り替える前に、直前の話題の中で聞き残しがないかを思い出せるか 沈黙を埋めるために「次の質問」を矢継ぎ早に出してしまっている

研究で結びついていたのは「相手の話を聞いて、そこに乗っかる」という行動です。会話マニュアルにある「初対面で使える質問100」を覚えるよりも、直前の相手の言葉から1語拾うクセ を作るほうが、この研究の結果には沿いやすい使い方になります。

難しいのは、頑張って話題を用意するほど、目の前の相手の言葉を聞き逃しやすくなることです。だからこそ、「次に何を聞こう」と考える前に、いま出てきた言葉を一度拾うだけでも、会話の手触りは変わります。

例えば、同じ「質問する」でも、会話のつながり方はかなり変わります。

話題を切り替える質問と、乗っかる質問
状況話題を切り替える質問乗っかる質問
「最近、朝ランを始めたんです」 「休日は何してるんですか?」 「朝ラン、始めたきっかけって何だったんですか?」
「仕事で大阪に行くことが多くて」 「旅行は好きですか?」 「大阪だと、よく行く場所って決まっているんですか?」
「料理はあまり得意じゃないです」 「好きな食べ物は何ですか?」 「じゃあ、外食でつい選びがちなものってあります?」

ポイントは、気の利いた質問を用意することではありません。相手が今出してくれた言葉を、1つだけ拾って返すことです。

ただし、フォローアップ質問を増やそうとして、会話が面接のようになると逆効果です。1つ聞いたら、相手の答えに軽く反応し、自分の小さな情報も少し返すくらいが自然です。

03OK・注意・避けたいの目安

実用的なボーダーラインを、研究結果と生活感覚で整理してみます。研究は4分間×多数のスピードデートが対象なので、長時間のデートにそのまま当てはまるとは限りません。あくまで「初対面〜数十分の会話」での目安として読んでください。

OKと考えてよい目安

  • 相手の発言を受けて、「具体的には?」「どんなふうに?」のような掘り下げ質問が自然に出ている
  • 会話の中で、相手が出してくれた話題の中身(場所・人・時期・きっかけ)を覚えていて、後で触れている
  • 自分の話と相手の話が、会話のターンとして大体バランスしている

このあたりは、相手からすると「自分の話がちゃんと届いている」と感じやすい形です。質問そのものより、聞いたあとに相手の答えを受け止めていることが伝わります。

注意したい目安

  • 質問は出しているが、毎回まったく違う話題に飛んでいる(フルスイッチばかり)
  • 「私はこう思う」「自分はこういうタイプ」と、自己プレゼンの分量が極端に多くなっている
  • 相手の答えが短いとき、深掘りせず別の話題に逃げてしまう

これが続くと、会話自体は途切れていなくても、相手には「自分に興味を持たれている」という感覚が残りにくくなります。質問がチェックリストのように並ぶと、会話というより確認作業に近づいてしまいます。

できれば避けたいやり方

  • 質問の数を増やすために、聞かなくていい個人情報(年収・体重・元恋人の数など)まで踏み込む
  • 「答えづらいだろうな」と分かる話題を、深掘り名目で連続で出す
  • 相手の発言を全部おうむ返しして、自分は何も話さない(情報の偏りで会話が成立しなくなる)

避けたい理由はシンプルで、相手が「聞かれている」より「値踏みされている」「尋問されている」と感じやすいからです。深掘りは、相手が話したがっている場所に少し明かりを当てるくらいで十分です。

研究そのものは「失礼な質問」「立ち入りすぎる質問」までは扱っていません。著者らも論文で、「無礼な質問は会話の質を下げうるが、無礼な発言と同じくらい不快にもなりうるので、これが質問固有の効果か、単に無礼な内容そのものの効果かは判断できない」 と注意点として書いています。深掘り=何でも聞いていい、ではない、という点は、生活側の判断として外さないでください。

04研究の概要(くわしく知りたい人向け)

ここからは、論文の中身をもう少し具体に書きます。読み飛ばしても結論は変わりません。細かい数値は、直後の Research note にまとめています。

  • 論文全体は3つの研究で構成され、本記事では恋活・婚活に近い対面スピードデート研究を中心に紹介しています。
  • 110人の男女が、1回4分のスピードデートを複数回行い、会話は録音されました。
  • デート後、参加者は相手についての短い質問紙に答え、「次のデートを希望するか」を回答しました。
  • 会話内の質問は、フォローアップ質問、フルスイッチ質問、ミラー質問、挨拶質問の4タイプに機械学習で分類されました。
  • 主に結びついていたのは、質問の総数ではなく、フォローアップ質問がその人の質問全体に占める比率でした。
Research note 裏付けにした論文

細部を確認したい方向けに、論文の枠と主な数値を残しておきます。

著者
Karen Huang, Michael Yeomans, Alison Wood Brooks, Julia Minson, Francesca Gino
タイトル
It Doesn't Hurt to Ask: Question-Asking Increases Liking
掲載誌
Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 430–452
出版年
2017年
構成
計3つの研究(Study 1: ネット越しチャット/Study 2: ネット越しチャット+第三者評価/Study 3: 対面スピードデート)。本記事は恋活・婚活に近いStudy 3を中心に紹介
スピードデート対象
110人の男女が3回のスピードデートセッションに参加。1セッションあたり15〜19回・1回4分間。先行のスピードデート研究データ(Jurafsky, Ranganath, & McFarland, 2009 / Ranganath, Jurafsky, & McFarland, 2013 ほか)から提供
測定
全員マイク装着で会話を録音。デート毎に「この相手と次も会いたいか」(はい/いいえ)を質問紙で回答
質問の分類
Studies 1・2のデータでLASSO分類器を訓練し、4タイプ(フォローアップ/フルスイッチ/挨拶/ミラー)に自動分類。サンプル外テスト分類精度86.97%
質問頻度の平均
1デートあたり平均9.80回(SD=5.30)。会話ターンの約22%が質問。内訳:フォローアップ4.51回、フルスイッチ3.20回、ミラー1.76回、挨拶0.33回
「次も会いたい」回答率
n=1,961ペア観察のうち46.81%が「希望」。男性は相手の56.78%に希望/女性は36.84%
主結果(質問総数)
性別統制で β=.15、SE=.09、p<.10。通常よく使う5%基準では、はっきりした結果とは言いにくい
主結果(フォローアップ質問比率)
性別統制したロジスティック回帰で β=.24、SE=.10、p<.05(ロジット係数なので「24%増える」とは読めない)
効果量
フォローアップ質問比率が約8ポイント高いと、20回のスピードデートで「次も会いたい」と思われる相手が平均1人ほど多い差に相当(このサンプルからの推定/観察研究の相関)
個人差の安定性
同じ人の他デートでの質問頻度がその人の質問頻度の最大の予測因子(r=.53、フォローアップ比率は r=.56)
2025年の訂正
2025年にJPSPで訂正が出ています。独立監査により報告上の軽微な誤りが見つかった一方、論文の結論と主要な仮説検定結果は維持された、と訂正文では説明されています。
DOI
https://doi.org/10.1037/pspi0000097

2025年の訂正について

この論文には、2025年に Journal of Personality and Social Psychology から訂正が出ています。訂正文では、独立監査によって一部の結果報告に軽微な誤りが見つかった一方で、論文全体の結論、各仮説検定の実質的な結果、データ収集の完全性を疑う理由はないと説明されています。本記事では、その訂正の存在を前提に、結論が維持されている範囲で紹介しています。

05ここで気をつけたい点(限界)

この研究は、万能な会話術を証明したものではありません。ただ、「相手に興味を持つ」を具体的な行動に置き換えるヒントとしては使えます。そのうえで、日本の恋活・婚活に当てはめるときの注意点を整理します。

  • スピードデート研究は 観察研究(相関)です。著者らも本文で「因果として解釈はできない」と明言しています。「フォローアップ質問を増やせば必ず相手から『また会いたい』と思われる」とは、この研究からは言えません
  • フォローアップ質問の効果は、参加者の魅力度(asker-level fixed effects)を統制すると弱まりました。著者らは「もともと魅力的に評価されやすい人ほど、フォローアップ質問も多めに出していた」可能性も示唆しています
  • 1回のデートが 4分間 という短い設定です。お見合い・カフェデート・複数回会ってからの関係に、そのまま当てはまるとは限りません
  • ここで見ているのは、実際に次のデートが成立したかではなく、直後の質問紙で「次も会いたい」と答えたかです。また、疑問符がないけれど質問の機能を持つ発言(例:「もっと聞かせて」)は数え漏れています
  • 著者らは「質問が多すぎると、相手が話しすぎて疲れる/自分のことを開示しなさすぎて好かれない、という曲線的な関係もありうる」と書いています。「とにかくたくさん質問する」という極端な使い方を、この研究は支持していません
  • 参加者の年齢・国籍・人種構成について、本論文(Huang et al., 2017)では詳細を再掲していません。米国・英語話者の大学院生中心のデータなので、日本語のデート文化(敬語・距離感・LINEでのやり取り)にそのまま置き換えるには注意が必要です
  • 競争的な状況(例:婚活パーティーで参加者がライバルを意識している場面)では、質問が「探り」として警戒される可能性もあります

つまり、この研究だけで「これをすれば必ず好かれる」とは言えません。それでも、相手に興味を持つ姿勢を、相手の言葉を拾ってもう一歩聞く という小さなスキルに変える第一歩としては、十分に使いやすい知見です。

06まとめ:質問の数を競うより、「直前の話に乗る一手」を残す

この研究は、初対面の会話で「とにかく質問の数を増やせば好かれる」とは言っていません。むしろ言っているのは、相手の話を聞いた上で、そこに乗っかる質問を1つ多く出せるかどうか が、相手から「また会いたい」と思われることと結びついていた、ということでした。

  • 自分の話で会話を埋めるより、相手の発言から1語を拾って深掘りする
  • 「どんな話題を出すか」を準備するより、「直前に出てきた話のどこを聞き返すか」を意識する
  • ただし、深掘り=何でも聞いていい、ではない。失礼な質問・立ち入りすぎる質問は、この研究の結果からは外れる

一回のデートで完璧にやろうとする必要はありません。次の会話で、相手の話の中から1つだけ「具体的には?」を返す。そのくらいの粒度で試してみるのが、この研究との付き合い方として現実的です。

まずは次のデートやメッセージで、相手の言葉を1つだけ短く繰り返してから深掘りしてみてください。相手が「最近忙しくて」と言ったら、「忙しいんですね。どのあたりが一番大変なんですか?」と返すくらいで十分です。うまく話そうとするより、相手の言葉を置き去りにしないことから始めるほうが、会話は温かくなります。

07参考文献

Sources

本文内の統計・参考情報は、以下の資料をもとに確認しています。

L

LoveLabo編集部

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